やさしいルーマニア語
本, 伊藤 太吾
によって 伊藤 太吾
3.5 5つ星のうち 1 人の読者
ファイルサイズ : 27.66 MB
内容(「BOOK」データベースより)若き天才詩人ミハイ・エミネスク(1850‐1889)が詩を書いた格調高いルーマニア語、不滅のピアニスト・ヴァイオリニスト・作曲家であるジョルジュ・エネスク(1881‐1955)に音楽的インスピレーションを与えたルーマニア語、世界的に有名な神学者・作家ミルチャ・エリアデ(1907‐1986)の頭脳を形成したルーマニア語、白き妖精ナディア・コマネチに満点の演技をさせたルーマニア語、地方色豊かな民謡の哀愁に満ちたルーマニア語、町角で聞かれるラテンの情熱に満ちたルーマニア語。本書によってルーマニア(語)が、より身近になることを願います。内容(「MARC」データベースより)ドナウ河に肥沃な土壌を与えられたルーマニア。地方色豊かな民謡の哀愁に満ち、ラテンの情熱が満ちたルーマニア語。その日常表現、語源や歴史、旅行時の会話から文法までを解説したテキスト。
ファイル名 : やさしいルーマニア語.pdf
やさしいルーマニア語を読んだ後、読者のコメントの下に見つけるでしょう。 参考までにご検討ください。
もともと「『世界を学ぶオリジナル語学教材シリーズ』として 1998 年に大阪外国語大学から発行されたもの」(p. i) だと言うが,大学書林さんの語学書とは思えないほど粗雑な作りであると言わざるをえない.思いつくままに欠点や不備をあげてみる.1. まず「本書の構成から,初めの頁から読み進むのがよいと思いますが」(p. vi) と言われるとおりに p. 1 から始まる「まず覚えよう」の部を見てみると,発音の説明もフリガナもないままにルーマニア語文にぶちあたる.もちろん文字面だけを見て暗記することはできようが,日常的なあいさつや定型表現を文字だけで覚えてもしかたがあるまい.「文字と発音」の部を最初にもってくるべきだろう.2. それから pp. 14-19 になって「文字と発音」の部に至るが,これもむちゃくちゃである.(i) 全編通してフリガナがあるのはこの箇所のみなのでそう被害は大きくないのだが,「[la], [li], [lu], [le], [lo] は,それぞれ [ら],[り],[る],[れ],[ろ] で表しました」(pp. 17f.) と言ったそのページの終わりには早くも破綻して「dumnealui (ドゥムネアルィ)」や「iulie (ユリェ)」と書いている.(ii) また子音の発音について,「日本語をローマ字で表記したときと同じなのが原則ですので,ここでは省略します」(p. 19) とし,前ページに与えた五十音表 (pp. 16f.) を根拠としていっさいを省略しているのだが,なんとその五十音表には濁音・半濁音がない.z, d, b/p はそれでも問題はないが,これでは g と j は同じなのか,また摩擦音なのか破擦音なのかわからないし,g に前舌母音が続くときは摩擦音なのか,また g と c が語末のときには破裂音 [g], [k] でよいのかなど,想像するほかない.(iii) ルーマニア語の単語のアクセントは決まった規則がないというのに,この 6 ページ以外の箇所では単語にアクセントを書いてくれているところがない.(iv) また細かいところでは,p. 19 で代名詞 eu と ei だけは例外で e- のまえに [j] の音を伴うという旨が注意されているが,他書を見るとほかの代名詞 el, ea, ele やコピュラ動詞の活用形 este などもそうだという.このようにつづり字と発音について本書では基本的な部分さえ不明確である.3. 本編に入ると,実用的な会話例と例文の簡単な解説,単語の説明と関連表現の例文,というパターンで繰りかえされるのだが,この整理がまるでなっておらずむちゃくちゃである.(i) 単語リストはおおむね直前の例文に現れたものをあげてあるようだが,そこで初出のものがあげられていないのはご愛嬌としても,逆にその部分にいっさい登場しない単語があがっていることがまれでない.(ii) 例文解説も直前の例文にまったくないことを説明しているところがある (たとえば p. 98 のスキットには “Cam într-o oră.” 「だいたい 1 時間後です」とあるが,次ページでは「peste o oră は『1 時間後に』という意味です。mai mult sau mai puțin は全体で『おおよそ』という意味ですが,……」(p. 99) と言う).(iii) 課の後半で関連表現の例文をあげる節では,一字一句まったく同じ文が連続していて意図をはかりかねる (たとえば p. 46).(iv) 細かいことをあげつらうと,たとえば p. 112 で動詞 a place について「『好き・嫌い』に関する表現は《文法の要点》で,くわしく学びましょう」と言ったかと思うと数ページ後 (pp. 116ff.) の課で詳しく説明してしまい,《文法の要点》の部 (pp. 131-168) にはいっさい現れない.これらのことはすべておそらく,何度も例文の差しかえや課の加除訂正を繰りかえすうちに訳がわからなくなったものであろう.4. 誤字脱字が若干残っているのはさすがにご愛嬌である.著者には『ロマンス語概論』のように価値ある大著があるが,この本にかぎって言えばとても注意深く編集された本であるとは見えない.とはいえそのことでかえって丹念に読む必要のない本だとわかってしまえば気負わずに読み流せて多くの例文に触れられるとポジティブに考えることもできる.なにしろ会話例や随所の《ルーマニア一口メモ》などは十分実用的な内容である.もし改訂の機会があれば不備と未整理の箇所を丁寧に直していただけると貴重なルーマニア語入門書になると思うのだが,望み薄かもしれない.
0コメント